2023.02.25
こんにちは、八王子市・日野市・世田谷区で安心のご葬儀・家族葬のお手伝いをする葬儀社、都典礼(みやこてんれい)です。
今日もご葬儀に関する疑問、悩みの解消に役立つ情報をお伝えします。
終活という考え方が広く認知されるに伴い「自分の最期をどう迎えるか」について、個々人が真剣に考えるようになりました。その中で「尊厳死」についても関心を持つ人が増えています。
しかし「尊厳死とはどういうものを指すか」「尊厳死を迎えるためにはどうすればよいのか」を具体的に説明できる人はそれほど多くありません。そこでこの記事では、尊厳死とはどういうものなのか、その目的と日本の現状や問題点、海外での事例について解説します。また、尊厳死を望む場合、どういった手続きが必要になるのかも合わせて説明するので、ぜひ最後までご覧になってください。
尊厳死とは
尊厳死とは文字通り、人としての尊厳が保たれているうちに迎える死のことです。
具体的には、無理な延命治療を止め、苦痛を和らげるための緩和ケアを施した上で、安らかな最期を迎える準備を行います。自然のままに最期を迎えるという意味で「自然死」や「平穏死」といった言葉を使うこともあります。なぜ尊厳死が選ばれるのか、尊厳死の目的と安楽死との違いについて具体的に説明します。
尊厳死の目的
尊厳死は、人間としての尊厳が保たれているうちに自然な死を迎えることを目的としています。
医療が発展した近代では、老衰や病気によって身体が機能しなくなった場合でも、さまざまな延命治療によって命を延長することが可能となってきました。
しかしそれに伴い、自分で食べたり呼吸したりすることすらできず、ただ命だけが繋がれている状況になる場合があります。果たしてそれは人間としての尊厳が保たれているのでしょうか。
また、無理な延命治療を続けることで苦痛が長引いてしまうこともあります。
完治が難しい状況となったとき「無理して命を引き延ばすことをせず、苦痛を和らげる緩和ケアに徹することで安らかな最期を迎えたい」という希望を叶えるのが尊厳死です。
安楽死との違い
尊厳死と似た言葉に「安楽死」があります。安楽死とは、末期患者を病気による苦痛から解放するために、薬物などを用いて人為的に死期を早めることをいいます。
そのため、あくまでも直接死を早める行為はせず、延命治療をしないことで自然に死が訪れるのを待つ尊厳死とは違う意味をもつ言葉です。ただし、患者の苦痛を長引かせないという目的で、延命治療を止めて死期を早めることを「積極的安楽死」と呼ぶこともあります。
日本における尊厳死の現状と問題点
尊厳死の考え方は日本でも受け入れられつつありますが、法律上では尊厳死も安楽死も認められていないのが現状です。そのため、医師が患者の意向を尊重して尊厳死に応じた場合でも、殺人罪で訴えられるリスクが少なからずあります。
こうした現状を打開するため、2012年に尊厳死法制化を考える議員連盟が「終末期の医療における患者の意思の尊重に関する法律案(尊厳死法案)」を公表しました。この法案では、終末期の患者が延命治療を望まない意思を書面で示していた場合、その指示に従い延命治療の不開始をした医師は責任を問われないことを定めています。
しかし、この法案の公表時には反対意見が多く、国会提出までには至りませんでした。尊厳死の法制化は、日本の医療や社会全体に大きく影響を及ぼす非常に重大な問題です。そもそも終末期をどこからと定めるのか、不確定な要素を取り除いた上で慎重に検討する必要があるのです。
海外での尊厳死の事例
日本では合法化に至っていない尊厳死ですが、海外では尊厳死や安楽死を法的に認めている国もあります。
例えばスイスでは、一定の条件下での自殺ほう助が法的に認められており、実際に安楽死を希望してスイスへ渡った日本人も存在します。また、アメリカでは脳腫瘍により余命宣告を受けたブリタニー・メイナードさんという女性が、積極的尊厳死を選んだことを公表し話題となりました。この公表後、ブリタニーさんは安楽死が合法化されているオレゴン州に家族と移住し、希望通り安楽死を迎えています。その他にもアメリカの一部の州やカナダ、オランダ、ベルギー、ルクセンブルクなど、安楽死や自殺ほう助を認める国は年々増加しています。
尊厳死を望む場合どうしたらよいか
日本で尊厳死を希望する場合、どういった知識や準備が必要なのかを解説していきます。
尊厳死を迎えるための条件
先述した通り、現状日本では尊厳死を認める法律はありません。しかし、厚労省が2018年に改訂した「人生の最終段階における医療・ケアの決定プロセスに関するガイドライン(改訂平成30年3月)」では、人生の最終段階における医療・ケアについては、本人の意思に基づき、医師による適切な情報の提供と説明がなされた上で、本人の家族も交えた話し合いを繰り返し慎重に行い慎重に判断すべきであると明示されています。言い換えれば、上記の条件のもと三者の同意があれば、延命治療の中止等の措置も許容されるということです。
しかし上記は、あくまでも厚労省によるガイドラインに則った場合に限るため、法律上では依然としてグレーゾーンとなります。中には尊厳死を許容していない病院もあるので注意が必要です。
家族とよく相談をする
自身で尊厳死を選択する場合、家族とよく話し合っておくことも大切です。
自分が死を受け入れる覚悟ができていたとしても、家族が同じ気持ちであるとは限らないためです。終末医療において、本人の意思確認ができない状況にあるとき、本人に代わり家族の判断に基づいて治療やケアの方針が決定されることがあります。
本来の自分の希望と食い違いが発生しないためにも、なぜこの決断に至ったのか、家族にしっかり説明をし、理解してもらいましょう。
リビング・ウィルを作成する
尊厳死を望む場合、リビング・ウィルを用意しておくことも重要です。リビング・ウィルとは、簡単に説明すると「尊厳死に関する本人の意思表示」のことです。
例えば病気や事故で本人の意思確認が行えなくなった場合、人工呼吸器や胃ろうなどの延命治療をどこまで希望するか、治療の判断を誰に委ねるのかなどを書面に記しておけば、いざというときに有用となる場合があります。リビング・ウィルのフォーマットは日本尊厳死協会のサイト、各病院や自治体で独自に作成していることもあるので、それらを利用すると簡単に作成できるでしょう。注意点としては、リビング・ウィルには法的効力はないため、リビング・ウィルを提示していても尊厳死を許容しない病院もあるという点です。
現状日本の法律で尊厳死は認められていないため、病院側が罪に問われるリスクを避けるために上記のような対応をとる病院も少なからずあります。かかりつけの病院で尊厳死が認められない場合は、理解のある病院に転院するという選択肢も検討してみましょう。
まとめ
医療が発展し、さまざまな延命治療が可能となった現代だからこそ、死のあり方を自分自身で選択する権利が重要視されるようになりました。
いざというときに自分らしい最期を迎えるために、元気なうちに家族や医師と相談をして、自分の意思を伝えておくことが大切です。