納棺式について

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納棺式とは

都典礼世田谷店霊安室と棺

まず、納棺式ときいて一般の人がピンとくることはないと思います。皆様が一度もお葬式を出したことがない限り、お葬式というものは、式場に故人の写真やお花が飾ってあり、お坊さんがお経を唱えて遺族が焼香するといったものです。

しかし、ご遺族にとってはお葬式は最後のセレモニーであり、そこに至るまで様々なことを行います。今回はその中でも納棺式に注目し、解説します。

なぜ納棺式を行うのか

私たち葬儀社はご遺族様の依頼があればどこにでもご遺体の引き取りに参りますが、ほとんどの場合、ご遺体のみを引き渡されます。引き渡された段階で棺に入っているわけではありません。またお預かりしたご遺体は服を着ている場合もあれば、裸の場合もあります。

そのままお通夜をお迎えしてしまうと生前のお姿を覚えているご遺族やご友人に強いショックを与えてしまうことがあります。私たちはご遺体となった故人の尊厳と残された方々の思い出を守る為にご納棺式を行います。

~清拭~

納棺式には大きく2段階に分かれます。まずは清拭といわれる死後処置です。死亡に伴うお体の汚れを清めたり、腐敗や腐臭漏れを防止する処置を行います。この作業はご家族に強いショックを与える可能性があるので基本的にはお見せしません。ご自宅で行う場合は席を外していただくか、屏風等で目隠しさせていただきます。病院などで亡くなった場合、看護師さんが行うこともあります。基本的にはこの一連の処置を終えてからご遺族とご対面いただきます。

~儀式としての納棺式~

次にご遺族に参加していただく、儀式としての「納棺式」になります。一般にはここからを「納棺式」と呼ぶことが多いです。

当社の場合、霊安室で行うケースとご自宅で行うケースがあり、当社霊安室をご利用いただくことが多いです。事前にご遺族と協議して日時を設定します。お立合いを希望される方のご都合と弊社霊安室の稼働状況を突き合わせて決めさせていただきます。納棺式はなるべく早めの日程で行うことが望ましいです。

当日はいわゆる平服でお越しいただきます。喪服を着てくる必要はありません。

~末期の水~

故人とご対面いただいたご遺族には、末期のお水を取っていただきます。

末期のお水説明用 黒いお盆と小さな盃、綿棒

末期のお水とは

死水(しにみず)とも呼ばれ、亡くなった人にお水を飲ませたら息を吹き返したことから蘇生を願う民族的儀礼やお釈迦様が亡くなるときに一杯のお水を欲した逸話などから行うようになったようです。

現在では器にお水を取り、綿棒をくぐらせて湿らせたもので故人の唇を添わすように飲ませていただきます。

末期のお水を取っていただいた後、死化粧を行ったり、「逆さ水」と呼ばれる通常とは逆さの方法で作ったぬるま湯を用意し、故人の体を清める「湯灌」を行うこともあります。

~旅支度~

浄土真宗を除く仏教では、故人は亡くなってから49日間、7日ごとに十王の審判を受け輪廻転生すると考えられています。その旅の安全を祈り、西方浄土に旅立つ巡礼者になぞらえた白の装束をご遺族の手伝いの元整えるのが旅支度です。

 白装束には、

足袋、脚絆、手甲、六文銭、頭陀袋、数珠、天冠(三角頭巾)があります。

ご遺族に手伝ってもらいながら一つ一つ身に着けていただきます。

不幸事ですので逆さ事として紐を結ぶ際には縦に結び目を作ります。旅の道中紐が解けないようにしっかりと結んでいただき、最後は固結びで閉じます。一度目に作るコマと二度目に作るコマで縦になるように結びます。

白装束 経帷子と足袋など
白装束
六文銭の印刷物

 三途の川の渡し賃、六文銭と六文銭を収める頭陀袋です。

火葬の普及に伴い実際のお金ではなく印刷物で代用されるようになりました。地域によってはご遺族から小銭を集めて頭陀袋に入れて火葬するところもあります。

首から下げる場合もあれば、懐に納める場合もあります。

編み笠、ぞう

 編み笠と草履、天冠と金剛杖です。

天冠は三角頭巾とも呼びます。もともとは額に着けていました。巡礼者の衣装も額に頭巾をつけます。正装としては額に着けるのですが、近年は印象が変わってしまうことから直接つけずに写真のように編み笠に着けることが増えました。

金剛杖は旅の道中の魔よけ杖といわれます。

一連の旅支度を整えたご遺体はお棺に納め、蓋を閉じてご安置します。蓋には窓がついていて内側には内部の冷気を逃さないための透明なフィルムがついています。基本的には納棺後は窓からのご面会をします。

棺に納めることで冷気が内部で循環し、ドライアイスの持ちがよくなり、特にご自宅で安置している場合に効果的です。

最後に

お葬式は、事前に準備が難しいにも拘らずあっという間に過ぎていきます。日々変わりゆく故人の体と過ごすことができる時間はほんの一瞬です。

だからこそお葬式に関わる一つ一つの作法を大切にし、少しでも故人とご遺族の最期の思い出作りのお手伝いが出来ればと考えています。

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